春の空気がふわりと流れ込む部屋のなか。
窓際に置かれたこの兜が、やわらかな光を反射し、
部屋全体をほんのりあたたかく包み込んでくれます。
その色は、若葉のような薄緑。
未来へ伸びていく小さな芽のように、
わが子の成長を象徴しているかのようです。
前に大きく構える金の鍬形(くわがた)は、
静かな強さと誇りを感じさせる存在。
見るたびに「まっすぐに育ってほしい」
そんな想いが胸にこみ上げてきます。
織物仕立ての吹き返しは、伝統の中に優美さを感じさせ、
家族の空間にそっと彩りを添えてくれます。
そして、結びの紐には「正絹(しょうけん)」を使用。
しなやかで、手にした瞬間に上質さが伝わってくる絹の風合いは、
一度結べば、その姿に気持ちも整っていくような感覚を覚えます。
「本物」を選ぶ意味が、自然と心に残ります。
屏風は、生成りと淡い若草色を組み合わせた布張り。
添えられた雪洞(ぼんぼり)の灯りが優しく照らし、
まるで春の光の中にいるような安らぎを演出してくれます。
木製の一輪挿しに添えられた緑の葉が、
飾る空間に“生きた季節”を感じさせます。
小島辰広作、この兜には
伝統と今をつなぐ美しさと、
わが子を思う親の気持ちが丁寧に込められています。
毎年の節句に、飾るたび、語りたくなる。
やがて成長した子に「これが君の始まりだったんだよ」と、
伝えたくなる兜です。